2014年08月23日

1. 認知症とは

世界保健機構(WHO)の国際疾病分類ICD-10では、認知症は
「脳疾患による症候群であり、通常は慢性あるいは進行性で記憶、思考、見当識、理解、計算、学習能力、言語、判断を含む多数の高次皮質機能障害を示す。意識の混濁はない。」
と定義されています。

ちょっと難しい言葉が並んでいますね。「脳疾患による症候群」とは、神経の変性や脳梗塞などの血管障害によって、神経のネットワークが壊れて起きる脳の障害の総称だということです。「慢性あるいは進行性」というのは、一旦壊れた脳の障害は元に戻らない(これを不可逆性とも言います)し、今はまだ神経変性そのものの進行を止める治療法はないということです。意識障害(意識の混濁)のような一過性の状態でもありません。
また、認知症は「記憶」の障害、すなわちもの忘れだけでなく、思考力や判断力も広汎に障害される疾患です。日時、場所、周りの人物など自分の置かれた状況を判断する力を「見当識」といいますが、認知症では見当識障害がみられることも多く、しばしば生活の支障となってしまいます。
歳をとれば忘れっぽくなるのは皆同じで、メモやスケジュール帳に書き留めたりしてもの忘れをカバーできれば、記憶障害だけで認知症とはいいません。スケジュール帳をしょっちゅう置き忘れたり、そもそもメモしたことを忘れたり、生活の折り合いがつかなくなってきた時に、認知症の発症を疑います。

認知症の治療において、よく患者さんやご家族から、この病気は治りますか?と尋ねられますが、病気の定義からして「元には戻らない」ということは、一般的にいう「治癒」を目指すものではありません。認知症の症状は、加齢現象の延長線でもあり、年齢を重ねるごとに衰えこそすれ、決して若返るということはありません。
ただ、そこで何もせずにあきらめてしまうのではなく、認知症の進行を抑えながら、生活の折り合いをつけながら、年の功を積み重ねていくことに意義があると思っています。このことは、後述する「認知症の治療」の項目で考察します。
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右に、認知症と紛らわしい区別すべき病気の例を挙げています。これらは、一過性の症状だったり、良くなったり悪くなったりする動揺性がみられます。また、外科的処置であったり、不足したホルモンやビタミンの補充だったり、抗うつ薬の内服などの治療により、認知機能が改善する可能性があります。
注意すべきなのは、普段飲んでいるお薬によっても、認知症のような状態になる場合があるということです。


若い時から睡眠薬を飲んでいた人の場合、飲み慣れたお薬が悪さをするはずがないと思い込みがちですが、年齢を重ねるとお薬を代謝する機能も衰えて分解されにくくなり、若い時に比べると相対的に過量服薬の状況になりかねません。また、身体疾患の治療薬の中には眠気がさしてぼんやりする副作用を持つものがあり(上図赤囲み参照)、注意散漫になってもの忘れがみられることもあります。
posted by 御所ヶ谷HC at 13:07| Comment(0) | 認知症の症候学
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