2014年08月23日

3. 薬物療法

認知症の薬物療法では、中核症状をターゲットとしたお薬と、行動心理学的症候(BPSD)に対するお薬が使い分けられます。

中核症状に対する治療薬T2.png
神経伝達物質の分解を抑えたり、神経伝達の効率を高めたりすることで、神経回路の機能を維持します。神経変性過程を根本的に抑える訳ではないので、症状を緩和するための対症療法的な位置づけです。

ドネペジル(商品名 アリセプト):コリンエステラーゼ阻害薬といって、神経伝達物質の分解を抑えます。賦活効果が強いので、とにかく意欲低下を改善したい、元気づけたい時の第一選択です。覚醒作用があるため、せん妄を合併した時やレビー小体型認知症に相性が良いお薬です。もともとしっかり者の患者さんの場合、過剰賦活で気が立ったり、気持ちが空回りすることがあります。

ガランタミン(レミニール):コリンエステラーゼ阻害薬に分類されますが、アセチルコリン受容体にも作用して、セロトニンやノルアドレナリンなど、他の伝達物質の調整も行います。そのため、抗不安作用や抗うつ作用もみられ、過剰に煽り立てることが少ないやさしいお薬です。もの忘れをくよくよ悔やむ、軽度認知症の第一選択です。

リバスチグミン(リバスタッチ/イクセロン):コリンエステラーゼ阻害薬で、ドネペジルと同じような効き味ですが、「貼り薬」という点が特徴です。お薬を飲み忘れることが多い人でも、貼り薬だと目に見えて継続できているかどうか分かります。薬剤が皮膚からゆっくり吸収されて、血中濃度が安定するので、過剰興奮などの副作用が現れにくいのも利点です。

メマンチン(メマリー):他の3剤とは作用機序が異なり、神経伝達におけるノイズを抑えて、本来の信号が効率よく伝達されるように調整します。過剰な興奮を抑えるという抗精神病薬的な効き方で、怒りっぽいもの忘れに有効ですが、そのぶん眠気やふらつきといった副作用に注意が必要です。他の3剤のいずれかと、併用することができます。


BPSDに対する治療薬
抗精神病薬、気分安定薬:幻覚・妄想、攻撃的言動、興奮などを抑えるために用いられます。「抑え込む」ための薬なので、認知機能も抑え込まれてぼんやりしたり運動機能が低下したり、「両刃の剣」の側面があります。特にレビー小体型認知症ではパーキンソン症状の悪化や注意力の低下など副作用が出やすいので、注意が必要です。「抑肝散」という漢方薬が有効でかつ副作用が少ないため、広く使用されるようになりました。

抗うつ薬:抑うつ気分、意欲低下に対して用いられますが、認知症の不活発を改善する効果は乏しいようです。「SSRI」と呼ばれる種類の抗うつ薬が、前頭葉症状である「常同性」に対して有効との報告があります。

睡眠薬:睡眠覚醒リズムの障害が日中の活動性、注意集中を妨げてしまうため、昼夜のメリハリを維持するために睡眠薬も利用します。高齢者は薬物代謝が低下しており、ふらつき、転倒の危険もあるため、作用時間が短いもの、筋弛緩作用が少ないものを用います。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるゾルピデム(商品名 マイスリー)、エスゾピクロン(ルネスタ)、ラメルテオン(ロゼレム)などが有用です。催眠効果のある抗精神病薬や抗うつ薬を睡眠コントロールのために利用することもあります。

このように、認知症の治療においては、薬物療法はもちろん重要ですが、効果の面でも副作用のリスクの面でも、どうしても限界があります。
posted by 御所ヶ谷HC at 15:01| Comment(0) | 認知症の治療
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