2015年11月22日

2. 糖尿病と認知症

糖尿病は、血管内皮細胞の働きを障害するため、毛細血管をはじめとする細小血管障害や、大血管のアテローム硬化(粥状硬化)をきたします。糖尿病が脳血管性認知症のリスク要因になることはこれまでも知られていました。

一方で、久山町研究の解析により、アルツハイマー型認知症の重要な病理変化の一つである「老人斑」の出現と、糖尿病のインスリン抵抗性が関連していることが確認されました。

R3_1.png右のグラフは、九州大学久山町研究で発表されたデータから改訂引用しました (Matsuzaki et al. Neurology 2010; 75: 764-770)。老人斑出現の相対危険をみたものです。





HOMA-IRとは、インスリン抵抗性の指標であり、1が正常、2を超えるとインスリン抵抗性ありと判断されます。棒グラフが2本あるのは、2通りの調整の仕方で解析したものですが、いずれにしてもインスリン抵抗性が増すと老人斑形成のリスクが高まることが分かります。
インスリン抵抗性は、糖負荷2時間後血糖を高めます。グラフを見ると、APOE遺伝子多型の影響が極めて強いことが分かりますが、いずれにしても食後血糖が高いと老人斑形成のリスクが1.5倍以上高まります。

インスリン抵抗性が上昇すると、インスリン分解酵素活性が低下して、老人斑を構成するアミロイドβ蛋白の分解が妨げられます。また、インスリン抵抗性によりインスリンシグナルが破綻すると、グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK-3)が異常に活性化されて、タウ蛋白の異常リン酸化が起こり、神経原線維変化の形成につながる可能性が示されています。


R3_2.png右のグラフは、九州大学久山町研究で発表された別のデータから改訂引用しました (Ohara et al. Neurology 2011; 77: 1126-1134)。脳血管性認知症と糖負荷後血糖の相関を見たものです。耐糖能異常により、確かに脳血管性認知症のリスクが高まります。





R3_3.png右のグラフも、同じ研究論文からの引用です。インスリン抵抗性が高まり、糖負荷後血糖が上昇すると、アルツハイマー型認知症の発症リスクも直線的に上昇することが証明されました。







インスリン抵抗性は、生活習慣病の中心的な病態であるというだけでなく、年齢を重ねるごとに脳の変性にもつながる深刻な事態なのです。この論文の中で、世界保健機構(WHO)の診断基準で「糖尿病」と診断されたグループは、血糖コントロールが正常なグループに比べて、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2.05倍に高まることが示されています。
posted by 御所ヶ谷HC at 23:58| Comment(0) | 認知症の危険因子
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